管理栄養士として働いていると、「病院直営と給食委託会社、どちらで働くのがいいんだろう」と考えることがあると思います。
私自身、新卒では給食委託会社に入社し、3年間病院や高齢者施設の厨房業務を経験しました。現在は病院で栄養管理をメインに仕事をしています。現在の病院も厨房は給食委託会社が入っているため、今度は受託側として給食委託会社と毎日かかわっています。
そこで日々感じるのが
「給食委託会社で働いた経験があって、本当に良かった」
ということです。
厨房で実際に働いていたからこそわかることが今の仕事に役立っています。今回は、私が給食委託会社で働いた経験から、現在の病院勤務で「経験してよかった」と感じることを5つ紹介します!
給食委託会社で経験してよかったこと
衛生管理について学べる
食中毒事故を絶対に出してはいけないため、給食を提供するうえで衛生管理は欠かせません。例えば、
- 厨房に入る前の手洗い
- 厨房外に出るときの靴の履き替え
- 定期的な検便
- 調理器具や設備の衛生管理
- 次亜塩素酸ナトリウムの適切な使用
- 調理・保管時の温度管理
など、ほかにもきりがないほど衛生管理のポイントがあります。
※具体的な調理時間や運用方法は、施設の衛生管理基準やHACCPに沿った手順などにより異なります。
また、厨房業務でしか経験できないこととして、グリストラップの清掃を例に挙げてみますね(業者に依頼している施設は除く)
グリストラップの清掃は施設によって行う頻度は異なります。新卒で配属した事業所では毎週日曜にグリストの清掃を二人がかりで行っていました。初めて掃除したときは匂いと油脂の塊が強烈で…なかなか忘れられない衝撃があります。また、毎日グリストの掃除をする事業所もあり、カレーライスの日なんかはグリストの水も黄色だったりしてね、しかし毎日掃除しているおかげか匂いはそこまでしないんですよね。グリストの清掃を業者に委託している事業所ももちろんありました。
グリスト清掃経験が生きているかというとそうでもありませんが、今は業者に依頼する立場なので「どういう作業なのか」「どのくらいの頻度で必要なのか」を想像しやすく、業者や厨房スタッフとの話もスムーズになります。
厨房機器のトラブルに臨機応変に対応できる
病院や施設の厨房では、毎日さまざまな厨房機器を使用します。例えば、
- スチームコンベクションオーブン(スチコン)
- 温冷配膳車
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗浄機
などです。
厨房業務を経験していると、実際にこれらの機器を使っていた経験があるため、「この程度なら一時的に別の方法で対応できるかもしれない」「これは給食提供に大きく影響するからすぐに対応が必要だ」「この調理機器が使えないと、どの作業工程に影響するか」といったことをイメージしやすくなります。
給食提供全体への影響を考えて優先順位をつけることができるのは大きな強みだと思います。
厨房経験があるからこそ、現場で何が起こっているのかをイメージしやすく、給食提供全体への影響を考えて優先順位をつけることができるのは大きな強みだと思います。
アレルギー対応への理解が深まる
例えば、「牡蠣アレルギー」の場合。
「牡蠣を使わなければ大丈夫」と思うだけではなく、オイスターソースなど、牡蠣を原材料として使用している食品についても確認する必要があります。
また「小麦アレルギー」の場合。
「この食品には小麦が入っているのか」だけではなく「同じ工場で小麦を使用しています」と表記された食品についてどこまで対応するのか、加熱してあれば問題ないのかなど状況に応じて検討する必要があります。
給食の現場では、「アレルギー」と「嗜好」は別物ということも重要です。
「これは苦手だから食べられない」という好き嫌いの問題と、「アレルギーだから食べられない」という健康上の問題では、当然安全管理上の意味がまったく違いますよね。
アレルギー対応を考えるうえで重要なコンタミネーションについても、実際の調理現場を経験したことで具体的にイメージできるようになりました。
現在の業務においても、入院患者さまに禁止食品を伺う際、アレルギーなのか嗜好なのか区別して聞き取りをしています。(まだまだ勉強の余地はありますが;;)
保健所監査の対応経験がある
私の場合、給食委託会社で働いていた時、厨房の監査に立ち会わせてもらった貴重な経験があります。
委託側と受託側では用意する書類も異なりますが、監査に向けて必要な書類をまとめたり、当日の対応をしたりする経験は、受託側になっても安心材料になると思っています。(監査当日の緊張感は忘れられないです)
委託会社で働いていた経験が、現在の病院側での仕事につながっていると感じる部分です。
治療食の「献立展開」が分かる
病院の給食では、基本となる常食から、患者様の病態や栄養状態に合わせて治療食へ展開していきます。厨房経験があると、「なぜこの献立になっているのか」を厨房側の視点からも考えやすくなり患者様への説明もしやすくなります。
例えば、高血圧の患者様に対する食事であれば、食塩摂取量を抑えるために汁物の量や回数を調整することがあります。また、透析患者様の食事では、カリウムやリン、水分などを考慮した食事内容になりますよね。
実際に給食を作っていた経験があると「この栄養基準を、実際の料理にするとどうなるのか」ということをイメージしやすくなります。管理栄養士目線で厨房業務をしているといろいろな発見・学びがあるから、委託給食時代は大変だったけどやりがいがあったなあと思います。
栄養計算上では数字だけで見ていたものが、実際の料理としてどう展開されるのか。それを経験できたことは、現在の栄養管理業務にもつながっていると思います。
まとめ:給食委託会社での経験は、今の仕事にもつながっている
給食委託会社で働いていた3年間を振り返ると、現在の病院での栄養管理業務にもつながっていることに気づきました。
私が特に経験してよかったと感じるのは、
- 衛生管理について学べる
- 厨房機器のトラブルに対応できる
- アレルギー対応への理解が深まる
- 保健所監査を経験している
- 治療食の献立展開をイメージしやすい
という5つです。
病院の管理栄養士というと、栄養指導や栄養管理などの業務をイメージする人も多いと思います。でも、実際に患者様へ食事を届けるためには、厨房でどのように給食が作られているのかを理解することも重要だと私は感じています。
つまり「調理する側を知っているからこそ、栄養管理をする際にも見えるものがある」と私は思います。あの3年間は無駄じゃなかったと自信を持って言えます。
給食委託会社で働いていて「この経験は将来役に立つのかな」と不安に思っている管理栄養士さんや、新卒カードをどこに使うか迷っている栄養学生さんがいらっしゃるかもしれません。厨房経験は、大変なことも多いけど管理栄養士として働いていく中ではどこかで強みになると思います。まだまだ発展途上の私ですが、一管理栄養士の経験談として多くの方にこの記事が役に立てばいいなと思います。

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